学際科目の概要
沼津高専では、2012年から複合・融合領域に関する課題に数学、自然科学及び情報技術の知識を適用できる能力を育成するために、"学際教育"が行われており、高専本科3年次から5年次にかけて"学際科目"の授業が設定されていました。
しかし、2020年度の3年次の学生から従来の学際科目は廃止され、新しい学際科目が実施されるようになりました。
当記事上では、便宜上、2012年度から2019年度に3~5年次の学生に対して行われていた学際科目を旧学際科目、2020年度に3年次になる学生以降の学生に対して行われている学際科目を新学際科目と呼ぶこととします。
旧学際科目の概要
旧学際科目は、全ての学科の学生が、環境・エネルギー分野、新機能材料分野、医療・福祉分野の3分野の内、1つの分野を選択し、3年間その分野の学際科目を履修していました。
この3分野は専攻科のコースに直結しているため、3年次における学際科目の選択は重要なものとなっていました。
参考までに、2022年度専攻科のコースは、
・環境エネルギー工学コース
・新機能材料工学コース
・医療福祉機器開発工学コース
の3コースとなっています。
環境・エネルギー分野を選択した場合の履修科目
科目名称 | 単位数 | 対象学年 | 科目区分 | 備考 |
エネルギー 変換基礎Ⅰ | 1 | 3年前期 | 専門/必修 | |
エネルギー 変換基礎Ⅱ | 1 | 3年後期 | 専門/必修 | |
環境と新エネルギー | 1 | 4年前期 | 専門/必修 | |
社会と工学 | 1 | 4年後期 | 専門/必修 | |
エネルギー応用Ⅰ | 1 | 5年前期 | 専門/選択 | 必ず履修しなければならない |
エネルギー応用Ⅱ | 1 | 5年後期 | 専門/選択 | 必ず履修しなければならない |
新機能材料分野を選択した場合の履修科目
科目名称 | 単位数 | 対象学年 | 科目区分 | 備考 |
材料科学基礎Ⅰ | 1 | 3年前期 | 専門/必修 | |
材料科学基礎Ⅱ | 1 | 3年後期 | 専門/必修 | |
有機材料化学基礎 | 1 | 4年前期 | 専門/必修 | |
社会と工学 | 1 | 4年後期 | 専門/必修 | |
電気電子材料工学 | 1 | 5年前期 | 専門/選択 | 必ず履修しなければならない |
機能材料 | 1 | 5年後期 | 専門/選択 | 必ず履修しなければならない |
医療・福祉分野を選択した場合の履修科目
科目名称 | 単位数 | 対象学年 | 科目区分 | 備考 |
基礎生理学 | 1 | 3年前期 | 専門/必修 | |
医用工学基礎Ⅰ | 1 | 3年後期 | 専門/必修 | |
医用工学基礎Ⅱ | 1 | 4年前期 | 専門/必修 | |
社会と工学 | 1 | 4年後期 | 専門/必修 | |
医療計測学 | 1 | 5年前期 | 専門/選択 | 必ず履修しなければならない |
医用機器学 | 1 | 5年後期 | 専門/選択 | 必ず履修しなければならない |
社会と工学は、選択した分野に関わらず、全員が履修しなければならない。(学際分野共通科目)
5年次に設定されている学際科目は、科目区分上、選択科目となっているものの、「必ず履修しなければならない」と備考欄に書かれており、【沼津高専】科目の種類とGPA | 沼津高専情報局 中の、「受講するか選択できない選択科目」の区分に該当します。
新学際科目の概要
新学際科目では、全ての学際科目が、学修単位科目とされました。また、旧学際科目のように、学生が分野を選択することは行われず、全ての学生が同じ授業を受講することとなりました。
3年次若しくは4年次に実施される「社会と技術」の授業は、実施が各学科に委ねられており、「社会と技術」の授業は学科ごと受講する内容が異なります。
新学際科目の履修科目
科目名称 | 単位数 | 対象学年 | 科目区分 | 備考 |
社会と技術 | 1 | 3年若しくは4年 | 専門/必修 | 開講時期・内容は 学科により異なる |
社会と工学 | 1 | 4年後期 | 専門/必修 | |
社会と産業 | 1 | 5年*期 | 専門/必修 | (実施時期は調査中) |
「社会と技術」の実施時期
※2021年度の実施状況です
学科名称 | 実施時期 | シラバスURL |
機械工学科(M科) | 4年後期 | (執筆時点で不掲載) |
電気電子工学科(E科) | 3年後期 | 高専シラバス |
電子制御工学科(D科) | 4年前期 | 高専シラバス |
制御情報工学科(S科) | 3年後期 | 高専シラバス |
物質工学科(C科) | 3年後期 | 高専シラバス |
変更された点
学際科目の見直し
学際科目が導入されてから7年が経ち、高専に対する産業界の要請も変化しており、その変化にこたえるために、学際科目の見直しが行われました。
旧学際科目では、講義型の授業が主に展開されていたのに対し、新学際科目では、データ解析を扱う授業や、学生がグループで発表を行う授業が展開されたりするなど、産業構造改革を促す人材を育成する授業が行われています。
学際科目の科目の種類の変更
旧学際科目では、履修単位科目として設定されていた一方、新学際科目では学修単位科目として設定されています。
履修単位は、1単位当たり、30単位時間の対面授業を受講すること取得することができる単位を指します。学修単位は、1単位当たり、15単位時間の対面授業を受講し、自学自習を30単位時間行い、あわせて45単位時間の学修を持って取得することができる単位を指します。
※高専機構の通知により1単位時間は45分(※)
科目の種類を変更したところから、旧学際科目では講義型が主な授業スタイルだったのに対し、新学際科目では、学生に能動的に学んでほしいという先生の意図が隠されているように思えます。
5年次の学際科目の必修化
旧学際科目では、5年次に実施されるものは、”受講するか選択できない選択科目”であった一方、新学際科目では、"必修科目"となっています。
これにより、5年次に実施される新学際科目「社会と産業」の単位を落とした場合、仮に他の授業の単位をすべて取得していたとしても、卒業することができません。
学際科目の立ち位置が少し上がった形となりました。
学科に委任された学際科目の実施
旧学際科目では、学科ごとではなく、選択された分野ごと異なる授業が行われていました。新学際科目では、「社会と技術」の授業に関しては、開講学年の設定及び授業内容が学科に委ねられるようになりました。
学科ごとに特色ある学際科目が実施されており、普段各学科で学んでいる内容を実践的に活用する授業などが展開されています。
まとめ
学際科目が導入されて7年が経ち、学際科目が大幅に進化しました。その進化した点についてまとめてみましたがいかがでしたでしょうか。
今回の学際科目の変更もそうですが、沼津高専では、定期的にカリキュラムの見直しが行われています。入学時には存在していた科目が、卒業時には存在していないなんてこともあります。
先生方が産業界の要望に即したカリキュラムに随時変更するために日々努力されている環境で学ぶことができていることは、高専生の特権でもあると思います。
ぜひ、その特権的立場を利用して、様々なことを高専で学びつくしていってほしいと思います。
参考
沼津高専 学生生活の手引き,https://www.numazu-ct.ac.jp/wp-content/uploads/03campuslife/14handbook/R03handbook.pdf,アクセス日2021年6月26日
沼津高専50余年の歴史と これから・・・・,https://www.nct-dsk.com/files/soukaidayori/2015/files20151116095817.pdf,アクセス日2021年6月26日
2年生対象「学際教育ガイダンス」を実施,https://www.numazu-ct.ac.jp/blog/news-college/11970.html,アクセス日2021年6月26日
この記事は、沼津高専が一般に公開している情報を元に編集し公開しています。削除・修正要請はこちらよりお願い申し上げます。当記事は2020年度に実施された学際科目の変更点について言及したものです。
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